つまり構造的にはまず動詞を文の中心に置き、その前の領域(主語、この場合は I)と後ろの領域(目的語、この場合はJapan)を明確に分けて認識します。この位置が日本語のように逆転することは許されません。また副詞(この場合は very much)の位置は目的語(Japan)の後ろに固定されます。厳格なまでに論理的で明確な構造です。どんな置き方も許されてしまうような日本語とは好対照です。
これがどのようなことを意味するのかというと、まず自分と相手というものの世界を明確に区別し、そこには明確な対立の構図が表れます。そして、さらにそれ以外の領域(三人称)を区別して意識化します。いわゆる三人称(he,she,it)が主語であるときには動詞にsを付けるのはそのためです。(例えば He と run が結びつけば、He runs となりますね。)もちろん、この作業を欧米人たちはほとんど無意識に行っているのですが、この言語の構造は彼らの思考と世界観に大きな影響を与えているはずです。一 般に東洋人よりも欧米人のほうが自我あるいは自意識が発達していると言われるのはこのためです。彼らの文化の特徴を我々日本人のそれと比較すると際立つものとして、例えば、干渉を控えて個人の意思を尊重するとか、周りの環境と自己を同化せず、むしろある意味では 対立関係において捕らえるといったことがあります。これらのことも彼らの言語の構造と深く結びついているものと思われます。
語学の天才シュリーマンの学習法
ギリシア神話に登場する伝説の都市トロイアを発掘したことで知られるドイツの考古学者ハインリッヒ・シュリーマンは、十数か国語をマスターしたと言われます。その自伝の中で、語学習得を容易にする方法として、その第一に「音読」をあげています。つまり、外国語を声に出して読み、聞いたというのです。 彼が最初に習得した英語の場合、毎日曜日には英国教会の礼拝に二回は通い、その説教を聞いては、その一語一語を、そのとおりに「ロまね」したといいます。その結果、シュリーマンはわずか半年で英語をマスターしています。これを解釈すると、次のように言い換 えることができるでしょう。
「語学を習得するには、脳は一つの入力システムを使うだけではだめで、もう一つの出力システムを同時に使うことが大切である。その二つのシステムの相互作用によって語学能力は向上する。」 これをさらにくだいて言うと、リスニング(情報の入力) だけをしてもだめで、スピーキング(情報の出力)の訓練が同時になされることが大切である、ということになります。
「音読」こそ最強の学習法
英語を得意にするためには、何よりも毎日英語を口にすることです。毎日英語を口にすることによって、脳の中に新しい英語を話すための回路が開けていきます。
現在の先進国で共有されている個人の基本的人権という概念が日本ではなく、欧米で生まれたということも、このことを考えていただければご納得いただけることと思います。また、一般に他者との区別があいまいな日本語と比較して、彼らの言語はより論理的で分析能力にすぐれているとも言えます。例えば自然科学(物理、化学、生物な ど)は自然界の現象を客観的に認識し、分析することから始まります。そして論理的な思考でその中から普遍的な法則を抽出します。ニュートンがりんごの木が落ちたのを観察して万有引力の法則を発見したのは有名な話です。このように客観的に周りの世界を認識し、論理的な分析をする自然科学は東洋よりも西洋で発達し、体系化されました。これは自然界を自分の意識と一体化して感じてしまい、自分と他者との間に明確な境界線を持たない日本人とその言語よりも、自然界を徹底的に観察し(動作の対象)として捕らえ、他者と自己との区別を明確に意識化する欧米人とその言語のほうがが分析的な能力においては優れているということでもあります。
このように日本語とはまったく異質の言語を学べるということは、まったく異質の意識構造を日本人の意識の中に取り込むということでもあるのです。これが日本人の意識に大きな影響を与えるということはもう皆さんにもご理解いただけたかと思います。
これは日本語と英語とでは音読しているときに使っている脳の部分が異なるためだといわれています。ですから声を 出して、同じ文章を何度も何度も音読すると、自然に脳の中にある英語を理解するための回路が築かれ、英語力全体が向上します。さらに毎日音読し暗唱するまでになると、英語を理解する力は急速に上達します。 また、暗唱して覚えた英語を人前で話してみるのも効果的です。さきほどのシュリーマンの語学修得に面白いエピソードがあります。彼がギリシャ語を学んだときに、 お金を払って人を雇い、その人を自分の前に立たせて、 自分が覚えたギリシャ語の物語をひたすらに話し続けたということです。しかもその相手というのはギリシャ語をまったく理解しない人だったということです。ちなみに塾の音読では、音読暗記プリントで覚えた詩や短文をみんなの前で暗唱します。 音読のコツは、姿勢を正して、大きな声で、テンポよくの3つです。
リズムや響きを楽しめることが大切です。そのうちに、文章が自然に頭に入ってしまいます。覚えたら、テキストを開かずに暗唱に挑戦してみましょう。さらにオリジナルの文法プリント(+自習プリント)で英語の構造とルールを理解します。そしてそれを作文プリントの中で使えるようになるまで何度も繰り返して練習すれば、どんな問題にも対応できる本当の英語力を習得できます。
学校の勉強は決してむずかしいものではありません。文部科学省の 「学習指導要領」を見ると、教える内容は子どもの頭で理解できることに 限られています。できない子がいるのはおかしな話です。しかし、現実に はできない子がおおぜいいます。塾に入れても、家庭教師をつけても、な かなか成績が上がりません。これは一体どうしたことでしょう?できないの は、勉強の「やり方」を知らないから。そしてその「続け方」を知らないから です。できない子はこのどちらかに当てはまります。例外はまずありません。 今まで「できない」「ダメだ」と言われ続けてきた子でも、指導法を工夫する だけでその効果が表れます。